2019年、11月に入り、気の早い方々のカウントダウンも始まりそうな時期になってきました。そんな中で、ふと今年を振り返ると、出光美術館に3回足を運んだことがわかり、その都度、驚きや感動をもらったので、記録に残したいと思います。
企業系の美術館、特に、明治維新後から大正・昭和にかけて事業を興した方々の私的コレクションを美術館とした、東京都内では、五島美術館や根津美術館、山種美術館、とも異なるコレクションに思えます。これらの美術館にある所蔵品(創業者の方のコレクション)も、かなり素晴らしいことはもちろんなのですが、これらのコレクションは、創業者のかたの趣味・趣が明確であり、それをストレートに反映しているので、時期や時代は広範囲にわたっていても、所蔵するテーマは特定のものに絞られているようです。
一方、出光美術館のコレクションを見ていて感じることは、「日本の書画、中国・日本の陶磁器など東洋古美術が中心」とうたいつつも、アジア各国および中近東の陶片資料を集めた陶片室が一般公開されているように、広範囲にわたるコレクションをお持ちです。そして、そのコレクションの組み合わせで、毎回観覧者を楽しませてくれます。
こちらは、当サイトの記事を、まずはご一読いただければと思います。(こちら)
展示の大きな趣旨である「旅する染付け」。これを観覧者がわかりやすく体験できるような工夫の裏にある豊富なコレクションに感動した展覧会でした。
緑釉・褐釉・白釉(透明釉)が掛け分けられた華麗な装飾が魅力的な唐三彩。20世紀初頭の中国で鉄道敷設工事中に偶然発見されてから世界中の美術愛好家を虜にしている数々の名品に関する展覧会です。
そして、わずか一世紀という短い期間だった唐三彩だけでなく、その後の中国陶磁器の歴史で重要となっていく、遼三彩、金三彩の作品も時代に沿って展示されています。
展示内容は、すべて出光美術館の所蔵品から。
また、中国にとどまらず現在のイラン地方で発生したペルシア三彩と呼ばれる作品も展示されています。
必ずしも唐三彩を継承しているわけでないものの、関係性の有無に関しては現在も研究途上であることなども学べました。
関係は不明ながらも、世界各地の人々の美に対する共有の価値観があるのでは、と思わせる作品の色や形や佇まい、時代、地域を超えて、横に並べてみることができるというコレクションの豊富さを改めて感じました。
松尾芭蕉が奥の細道の旅に出て330年。これを記念して、芭蕉の書画や芭蕉を敬慕する方々の作品が展示された展覧会。俳諧にまつわる美術が大集合です。
芭蕉の直筆については、旅の途中で書き留めて地元の名士や弟子に与えたモノ、それが奥の細道で採用された句とは微妙に異なっていたりと、奥の細道は、まだまだ研究の途上であることがわかるコレクションがいっぱい。
そして、心に残ったのは、仙厓の作品。出光美術館でも力を入れているコレクションの一つです。これまで、ノーマークだったのですが、かなりユニークで達観を持たれた、奔放な和尚(臨済宗の禅僧)さんだったようです。
数々の句(狂歌)を残されていますが、今回琴線にふれたのは、『堪忍柳画賛』という柳の絵に描かれた
ならぬ堪忍するが堪忍の処世訓を柳に例えた仙厓の代表作の一つと言われている作品(句)です。
他にも、芭蕉の「古池や」をパロディ化(?)した作品 「池あらば芭蕉に飛んで聞かせたい」 「古池や芭蕉飛び込む水の音」等も残されているようです。
NHK「日曜美術館」でも取り上げられた模様。ぜひ観たかった放送(2007年10月14日放送)です。また、「これが江戸時代!? ゆるカワすぎる仙厓(せんがい)和尚の作品に思わずニンマリする」という投稿も楽しめます。
今後も仙厓作品の展示は出光美術館だけでなく、幾箇所で開催されるようなので、追っかけていきたいと思います。
ロビーから眺める皇居も四季折々の景色を楽しめます。ぜひ足をお運びください。
(注)本投稿の作品画像は、ポストカード・図録等を撮影したものです。従って、色、全体の構図などは実物とは異なります。
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