京都造形芸術大学通信教育部芸術教養学科での課題で、「見た目」と「見た目問題」について考察しました。
(課題レポート提出時である2020年2月時点のままです。)

課題の正式な内容は、以下の通り。

テキストを参考にしながら、自分にとって身近な「美」や「芸術(アート)」に関わるテーマについて、もしくは、「美学」の課題について、1600字程度で自由に考察してください(その際、何について論じているのかわかるように、タイトルを付けておいてください)。

直近の様々な活動を振り返るとキーワードとして頭に浮かぶ「見た目」について、整理してみることにしました。

石田祐貴さん

また、彼とは異なる症状を持ちながらやはり「見た目」で苦労されている方々のインタビューをまとめた水野敬也氏の著作『顔ニモマケズ─どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語』にも登場し、様々なトークイベントにも参加されている(※2)。

そんな、石田さんは「見た目問題」当事者でありながら、それを前向きに受け止めようとしている。彼から教えてもらった言葉として、ラインホールド・ニーバー(※3)の「変えられるものを変える勇気を、変えられないものを受け入れる冷静さを、そして両者を識別する知恵(賢さ)を」が印象的である。当事者だけでなく当事者を取り巻く人・環境・社会からの寄り添いも重要であるということである。ここでの「見た目問題」とは、社会にある程度存在する「普通」という基準からの乖離であり、それは、同じく社会にある程度存在する「美醜」の判断基準よりもより原理的な判断基準のように思える。

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著作の中でも、又、直接聞いた講演でも「人は見た目が100%」メラビアンの法則「視覚55、聴覚38、言語7」(※4)を軽く凌駕)と断言する。最初に言われると嫌な印象を持ちがちだが、理想の自分を創り、それを知ってもらえるような「魅せ方」を努力することが大事だと思えば、納得できる。講演では、笑うときの歯を見せる本数、握手の仕方と立ち位置など、実践的な話も披露してくれた。自己の理想に向かって進み、そしてその結果、目標を達成する、これも重要だとは思う。そしてその為には、社会が持っている「美醜」の判断基準を理解し、それを徹底的に利用する

一方、石田さんと会話をするうちに頭をよぎった書籍とその作者がある。『会う人すべてがあなたのファンになる一流の魅せ方』という書籍とその著者鈴鹿久美子氏である。鈴鹿氏は「勝たせ屋」という異名をもつ選挙戦略家であり、自他共に認める「魅せ方のプロフェッショナル」である。

ケインズの「美人投票」

「美醜」の判断基準を利用すると言うとよぎるのが、経済学者ケインズの「美人投票」の話である。「美人投票」とは、著書『雇用・利子および貨幣の一般理論』の中で株式投資の例え話として引き合いにされたものである。株式投資の価格決定は、投票者が100枚の写真の中から最も容貌の美しい6枚を選び、その選択が投票者全体の平均的な好みに最も近かった者に賞品が与えられるという新聞投票に見立てることができるとした。

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各投票者は、自身が最も美しいと思う写真を選ぶのではなく、他の投票者の好みに最もよく合うと思う写真を選択しなければならないことを意味する。何が平均的な意見になるのかを期待して予測することになる。ここで例として使われた美人投票の前提には、「美醜」の判断基準は、絶対的なものでもなく、社会に普遍的に存在するものでもなく(少なくとも多くの人の自明な共通認識ではなく)ということになる。そして、例として用いられるくらい「見た目」への意識は遍在的なものなのであろう。

以上、最近の自らの活動で接点のある「見た目問題」から派生して「見た目」について自身の持つ関連知識を繋げてみた。その結果感じることとしては、「見た目」はやはり重要なのだと思う。それが「美醜」に関わらず「普通」との選別という意味においても、である。

「見た目」という言葉が既に意味しているように、それを判断するのは当事者ではなく、周囲の人間である。「Beauty is in the Eye of the Beholder」(「蓼食う虫も好き好き」の表現より本トピックには適していると思う)ともあるように、それは周囲の個々の人間によって異なってくる。そしてその異なりの存在自体を広く許容していく社会や環境であれば、個人レベルの関係で重要な「見た目」も社会レベルで「見た目問題」となることはなく、個々人の多様性や独自性の範囲に収まってくるのではないだろうか。そして見せる・見られる当事者側は?と言うと、石田さんも鈴鹿氏も、根本は同じ立ち位置なのだと思う。周りの状況を受け入れた上で、それを有効活用していくという点で。

( All Photo by Markus Spiske from Pexels

【脚注】
(※1)
登壇の概要紹介として、下記を参照。
東京藝術大学履修証明プログラム「DOOR」公式サイト
『当事者との対話6「社会・人との関わりの中で生きること」』
(閲覧日:2020年1月18日)
http://door.geidai.ac.jp/compulsory/517/

(※2)
例えば、2019年8月16日、東京・渋谷ヒカリエでのイベント。紹介記事は、下記参照。
『村本大輔と探る「見た目問題」。恋愛、結婚、就職について当事者が語る』
(投稿日:2019年9月20日、閲覧日:2020年1月18日)
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2019/36629

(※3)
米国の神学者,倫理学者。元・ユニオン神学大学教授。
その「祈り」として以下の言葉が有名。
 変えられるものを変える勇気を
 変えられないものを受け入れる冷静さ
 そして両者を識別する知恵(賢さ)を

 God, give us grace to accept with serenity
 the things that cannot be changed,
 Courage to change the things
 which should be changed,
 and the Wisdom to distinguish

(※4)
アメリカUCLA大学の心理学者/アルバート・メラビアンが1971年に提唱した概念。初対面の人物を認識する割合は、
「見た目/表情/しぐさ/視線等」の視覚情報が55% 、
「声の質/話す速さ/声の大きさ/口調等」の聴覚情報が38%、
「言葉そのものの意味/話の内容等。」の言語情報が7%
と言われている。

【参考文献】
水野敬也 
『顔ニモマケズ─どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語』
ミズノオフィス 2017年

鈴鹿久美子 
『会う人すべてがあなたのファンになる一流の魅せ方』 大和書房 2017年

J.M.ケインズ(著) 間宮陽介(新訳)『雇用・利子および貨幣の一般理論』(上)(下) 岩波文庫 2008年
オリジナルは、
John Maynard Keynes
『The General Theory of Employment, Interest and Money』 
Palgrave Macmillan 1936年

東京藝術大学履修証明プログラム「DOOR」公式サイト
(閲覧日:2020年1月18日)
http://door.geidai.ac.jp/about/

東京藝術大学履修証明プログラム「DOOR」公式サイト
『当事者との対話6「社会・人との関わりの中で生きること」』
(閲覧日:2020年1月18日)
http://door.geidai.ac.jp/compulsory/517/

『村本大輔と探る「見た目問題」。恋愛、結婚、就職について当事者が語る』
(投稿日:2019年9月20日、閲覧日:2020年1月18日)
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2019/36629

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