2019年夏の美術館巡りでも印象に残った目黒区美術館での展覧会です。すでに会期(2019年7月13日(土)~2019年9月8日(日))は過ぎていますが、記録として残しておこうと思います。
きっかけは、NHK日曜美術館の「アートシーン」という、放送時期に開かれている展覧会の紹介の一コマ。(2019年8月4日放送)
モネのような作品が映し出されて印象派の展覧会かと思えば・・・これまで存じ上げなかった、太田喜二郎画伯の展覧会でした。
しかも、場所は東京目黒、身近なところではないですか。ということで、出かけた展覧会。
「日本の画家でも、このような絵を描く方がいらっしゃったなんて」という驚きばかり。
黒田清輝画伯に学び、師の勧めでベルギーに留学。かの地でベルギー印象派の画家 エミール・ クラウスから点描表現を徹底的に学んだそうです。その手法で作られた作品は、ベルギー在住の時から光を巧みに操った作品となります。
帰国後も、同じような手法で素晴らしい作品を描き続けます。
しかし、ある時を境に点描表現を捨て、より平滑な筆遣いによる手法に移行していきます。それでも柔らかな光と影を操った作風は秀逸さを失いません。
その太田画伯は、京都帝国大学で教鞭をとっている際に、建築科で同じく教鞭をとっていた建築家藤井厚二と出会い、共通の趣味の茶事などを通して交流を深めます。太田画伯は、自宅のアトリエの設計を藤井氏に任せるぐらい、深い交流となっていきます。二人のやり取りをユーモラスに描いた「寿月庵茶会絵巻」は、楽しく観ることができました。
一方の藤井氏は東京帝国大学を出て竹中工務店に勤務。建築に関する諸設備および住宅研究のため欧米を視察して、帰国後は京都帝国大学で教鞭をとりながら自宅を実験住宅として五回にわたりたてるなど、西洋の技術を用いながら日本の気候風土に合う住宅旁を追求されたようです。その集大成といえるのが、重要文化財の「聴竹居」。
今回の展覧会では竹中工務店さんからの豊富な資料提供により、自然との調和をするための様々な工夫がわかりやすく解説されていました。
図録(解説書)の帯に付けられている美術評論家山田五郎氏の言葉「西洋の画法で日本の光を描いた画家と、西洋の合理性で日本の家を設計した建築家。二つの才能が京都で出会った。」が、とってもしっくりくる展覧会でした。
(注)本投稿の作品画像は、ポストカード・図録等を撮影したものです。従って、色、全体の構図などは実物とは異なります。
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