2019年2月7日 19:00-20:30 @ DMM本社24F(住友不動産六本木グランドタワー24F)
tagboat社主催のセミナー「現代アート徹底研究講座 -基礎編から応用編、最新アートニュースまで―」を聴講しましたので、備忘を兼ねたメモを。
講師は、tagboat社代表 徳光健治氏。tagboat社は、そのミッションが
タグボートは世界でもっともITを活用するギャラリーです。
我々はアートのポータルサイトを目指すのではなく、独自の視点から質の高いアートを セレクトし、ITによって付加価値を上げて販売していくことを使命としています。
顧客にとってアートを身近で分かりやすいものとし、顧客とアートの間にあるハードルを 無くすことを目的とします。
勘や経験ではなくデータ分析に基づいた経営でアートマーケットを革新していきます。
(公式サイト より)
という、ギャラリー。 当社が進みたい道を、かなり先に進んでいらっしゃる会社さんです。
今回の「メインテーマ」は、
「現代アートのマーケットを俯瞰的に見る、そして、その未来像を予想する」
でした。
1.AIの時代にアートはどう変わるのか
仕事(タスク)がなくなり(ホワイトカラーの30%程度が職を失うのでは)、暇な時間が増える、アーティストを目指す
→
アーティストの増加(芸大生は減ってきてるが、アーティストは増加傾向)、作品数の増加
→
作品数 > 購入者数 → 作品のデフレ化
21世紀になって30点が100億超で取引された、、
というピラミッドの頂点はあるもののマーケットは広がって、安く手に入れる市場ができてきている。
→
一般層のマーケットが拡大していく。(けど、単価も抑えられる。)
2.アートを買う理由
・部屋にある空間を埋めたい
・自分の趣味嗜好に囲まれて過ごしたい
・センスのある作品を所蔵していることを自慢したい(センスの良さ)
・作品の値上がりを狙って資産価値を増やしたい
・才能ある作家を応援したい(パトロン)
→
今後の方向性は、資産価値増大、パトロンとしての購入者が増えてくる。
3.世界のアートマーケット(いわゆる現代アート、古美術は含まず)
全体で8兆円。
1人当たりのアート年間購入額は、アメリカで約10,000円、日本で約400円。
4.投資としてのアート
全世界株価の平均よりも、現代アートのオークションでの平均値は上回っている。(1998年を100とする)
同時に、景気との連動は高く、トレンド自体は株価の推移にリンク。
(したがって、tagboat社の売上も、日経平均にかなり連動)
株式に比べて手数料は高いので、短期売買は向かない。長期保有が前提となる。
30、40代の起業家がアート作品を買い始めた。(日本人)
2016年に前澤氏が買ったバスキアは60億円。
その前年2015年、戦後生まれのアーティストのオークション価格、バスキアがトップで125億円。
(参考 奈良美智で、16位15億円)
2016年133億円 2017年313億円(125億で前澤氏が買った年(2017年7月))
→ 相場を動かしたことになる。
前澤氏購入後、高額取引のトップ25のうち10はバスキア。(高値で売る人も出ているという意味)
バスキアの平均価格が3倍以上になった。
5.売れる人は? (オークション売上トップテンのキャリアパスの共通点)
国際的な美術展にどれだけ出展できているか?
各地で行われるビエンナーレ、トリエンナーレ 特に「ベネチアビエンナーレ」。
パリ近代美術館、テートギャラリー、ドクメンタ、グッゲンハイム美術館、バイエラー財団美術館、ポンピドゥーセンター、ホイットニー美術館、など。
→
「権威はヨーロッパで作られ、マーケットは米国で作られる」
アートマーケットの拡大要因は?
富裕層の年齢が若い国は、マーケットが莫大に拡大する) ← 日本の個人資産1800兆円のうち70%以上が70代
資金が流動的であること ← 日本では多くが現金や土地で塩漬け保管
「セカンダリー市場をエンジンとして、プライマリー市場が回る」
→
ギャラリーから1回買った人がオークションなどに出すことで、マーケットの拡大につながる。
→
日本は、セカンダリーが小さすぎる。(クリスティやサザビーズの取扱額の2桁違う日本のオークション会社)
6.「米国で現代アートの市場が拡大する理由」⇒「アートが資本主義化している」
現代アートは戦後の米国で生まれ、米国の覇権と共に歩んできた。
1935年からの8年間、ニューデイール政策の一環として「連邦美術プロジェクト」あり。10000人近くのアーティストが恩恵を受け、40万点以上の作品が生み出された。その中に、ヨーロッパの戦火、ナチ迫害から逃れてきていたユダヤ系も多かった。
そして、戦後の評論家が理論的権威付けを行った。(著名な二人もユダヤ系)
クレメント・グリーンバーグ ⇒ ミニマルアート
ハロルド・ローゼンバーグ ⇒ アクションペインティング
アンディ・ウォーホールの登場
→ シルクスクリーンで複製印刷された作品にも価値が生まれるようになった。
ニューヨークの四大ギャラリー (これらもユダヤ系による経営)
Gagosian(世界最大のギャラリー)、David Zwirner、Hauser & Wirth、PACE
(TeamLab、奈良美智はPACE、村上隆はGagosian)
世界の著名コレクター、美術館の大物、オークションハウスの重鎮、ほぼユダヤ系。
(例外として、フランソワ・ピノー。世界一の現代美術コレクターでクリスティーズのオーナー。グッチ、サンローラン、プーマなど所有。)
オークションハウスの重鎮 これらもユダヤ系。
なぜユダヤ系が強いのか?
土地亡き民である人々が、市場を作って資金を獲得する、というのが得意。
それが、アート市場を作ってインサイダー的な世界を形成している。
7.これから伸びるタイプは?(日本人)
これまでの村上隆タイプは、日本にローカライズされているものをグローバリズムに変換してきた。
これからは、元々グローバル(日本色を押し出さない)な作風が評価されるだろう。
例えば 名和晃平 五木田智央 など。
8.アートの資本主義
「コレクターとアーティスト」の関係は、「投資家と起業家」の関係に。
コレクターは、投資家としてアーティストと会い、見極める。
(企業のIR評価と同じ)
アーティストは、起業家として作品(サービス)を提供する。
アーティストは、セルフプロモーションができてくるので、ギャラリーは単なる仲介ではなく、アーティストをプロデュース(コンサルティング)する。
作品の評価も民主化。コレクターの意見が反映する食べログ型評価の登場(ミシュラン型からの転換。作品が多すぎて評価できない)
9.最近のアートニュース
2019年1月18-20日に開催されていた第一回台北當代(TAIPEI DANGDAI)
(プロデュサー:マグナス・レンフリュー)
日本の巨匠クラス(村上隆、草間彌生、奈良美智など)も大きな作品を出していた。なかなか日本でもでてこない。
ローカリズムがグローバリズムに駆逐されていくのでは、、、、
ローカル色が強い「Art Stage Singapore」は直前で開催中止案内。「Art SG」が企画(11月開催予定)されている。
近代絵画が強くコンテンポラリーの少ないアートフェア東京は、ローカリズムが強く、今後は心配。
10.その他情報
ギャラリー店舗を阪急メンズ東京(銀座)に3/15からオープン。
「教養としてのアート 投資としてのアート」(仮題?)4/19 クロスメディア・パブリッシングより出版予定
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