京都造形芸術大学通信教育部芸術教養学科での課題で、筆者の感じる「イタリアのまちの美しさ」についてまとめてみました。

「融合・調和に基づく美しさ」が、「イタリアのまちの美しさ」の特徴であると思った時に、それを可能としているものは何なのだろうか?とも考えてみた。

1985年に定められた「ガラッソ法」では都市計画が必須であり、古きモノを無暗に廃棄させず、利便性とのトレードオフもある程度は涵養していくような、「まち」を構成する旧市街~中心市街地~田園地帯の全てに渡る体系的な枠組みを風景計画として策定する枠組みが整えられている。このような強制力を持つ仕組み(法制度)を整備していることが、明らかに調和・融合を壊さない為に重要な要因となっていると考えられる。

「Intervallo」 個展「Luce dItalia」より)

しかし、それはあくまでも受動的な要因であると考える。いくら仕組みがあっても、仕組みの中で具体的に計画、デザイン、実行、運営、していく人々(当事者であり、多くは当該「まち」の住人や出身者)の持つ感性・センスが悪ければ、醜悪な調和・融合が発生してしまうと思うからである。また、同時にその当事者達が連綿と過去から引き継ぎ、新たに創り出している「まち」を美しいと思うのは当事者だけではない。実際には、むしろ当事者ではないアウトサイダーである多くの来訪者(現地を訪れる観光者だけでなく、メディアを通じて間接的に訪れる・観る人々)も美しいと思わなければ、世の中で「美しいまち」とは評価されない(「Beauty is in the eyes of the beholder」とことわざにもあるように)。つまり、イタリアの「まち」が持つ調和・融合の美には、当事者でなくとも美しいと思う、いわば普遍的な(とまでは言わなくとも非常に多くの人に訴求する)何か、があるはずである。

美しいモノ・コトに対して「XX美」という言い方がある。現象形態から分別される「自然美」、「芸術美」、「機械美」。その他にも「造形美」、「機能美」など。いずれも追及すれば深淵な議論になっていくと思う。その中で、「まち」に対して美しいと思うのは、自然をうまく利用しているという「自然美」、人間が造り上げた様々なモノのもつ「造形美」、利用する人々が使いやすい・すごしやすい(と想像できる)「機能美」がバランスよく配置できているからなのではないだろうか。

課題にあたっての必読本は、「メルカテッロの暮らし」、です。ご一読ください。

写真は、以下の写真家、版権管理元の許可をいただき掲載
写真家:ジョバンニ・ピリアルヴ(Giovanni Piliarvu) http://giovannipiliarvu.com/ja/
版権管理元:Island Gallery http://islandgallery.jp/

新着情報のご案内をいたします。よろしければ、こちら よりご登録ください。

関連記事

  1. 陰翳礼賛

    2020.02.5

    陰翳礼賛

    谷崎潤一郎の随筆。代表的な評論作品とされています。初出は、雑誌『経済往来』の1933年(昭和8年)1…

    陰翳礼賛
  2. 「見た目」と「見た目問題」

    2020.03.22

    「見た目」と「見た目問題」

    京都造形芸術大学通信教育部芸術教養学科での課題で、「見た目」と「見た目問題」について考察しました。(…

    「見た目」と「見た目問題」
  3. イタリアの「まち」の美しさについて(その1)

    2018.07.25

    イタリアの「まち」の美しさについて(その1)

    京都造形芸術大学通信教育部芸術教養学科での課題で、筆者の感じる「イタリアのまちの美しさ」についてまと…

    イタリアの「まち」の美しさについて(その1)
  4. チームラボ下鴨神社糺の森の光の祭(京都 世界遺産)

    2019.09.16

    チームラボ下鴨神社糺の森の光の祭(京都 世界遺産)

    いまや全国各地で開かれるチームラボさんのイベント。世界遺産である下鴨神社で9/2まで開かれていた「糺…

    チームラボ下鴨神社糺の森の光の祭(京都 世界遺産)
  5. チームラボプラネッツ(豊洲)

    2018.10.25

    チームラボプラネッツ(豊洲)

    いまや全国各地で開かれるチームラボさんのイベント。東京都内では、お台場と豊洲でそれぞれ開かれています…

    チームラボプラネッツ(豊洲)
  6. インゲヤード・ローマン(Ingegerd Råman)展

    2018.09.24

    インゲヤード・ローマン(Ingegerd Råman)展

    日本・スウェーデン外交関係樹立150周年を記念して、東京国立近代美術館工芸館にて開催されている「イン…

    インゲヤード・ローマン(Ingegerd Råman)展
  7. 出光美術館のコレクション

    2019.11.3

    出光美術館のコレクション

    2019年、11月に入り、気の早い方々のカウントダウンも始まりそうな時期になってきました。そんな中で…

    出光美術館のコレクション
  8. 山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 生誕130年記念 奥村土牛

    2019.03.25

    山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 生誕130年記念 奥村土牛

    少し桜には早い時期に、一足早く 「醍醐」の桜を楽しみました。圧巻の醍醐桜ですが、奥村土牛の作品には、…

    山種美術館 広尾開館10周年記念特別展 生誕130年記念 奥村土牛
  9. 第18回文化資源学フォーラム 「コレクションを手放す 譲渡、売却、廃棄」

    2019.05.29

    第18回文化資源学フォーラム 「コレクションを手放す 譲渡、売却、廃棄…

    2019年2月17日(日)13:30〜17:00会場:東京大学本郷キャンパス法文2号館1番大教室この…

    第18回文化資源学フォーラム 「コレクションを手放す 譲渡、売却、廃棄」

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


過去記事はこちら

PAGE TOP