2019年2月26日 19:00-21:00 於:WASEDA NEO
講師;船山公認会計士事務所船山雅史

興味深いお話が多かったので、備忘をかねたメモを。

船山さんの略歴

1986-2005年 CITIとHSBCでプライベートバンキング業務に従事。
2005年10月から事務所。個人富裕層対象の業務。日本証券アナリスト協会で認定の「プライベートバンカー」

  • アート(現代アートに限らず)が、富裕層において資産運用のポートフォリオの一部であり、オルタナティブ(非金融資産)の一角を成す。
    CITI(1980年代のNY)にはアートアドバイザリー業務があり、キュレーター(学芸員)3人を抱えてた。
  • コレクターとしての始まりは、友人の抽象画(30~40万くらい)を数枚購入、がきっかけ。
    独立して自由になる時間ができたので、ギャラリー巡りを始めた(始めてしまった。)
    現在、200点越え、かちどきに倉庫借りるようになってしまった。。。。。(アートは病気

世界のプライベートバンクでのアート投資の位置づけ

  • ジェフ・クーンズ、バスキアが、、現代アートのオークション市場の最高価格を引っ張っている。
  • オークション市場は、アメリカ・イギリス・中国
  • 一時期、日本も頑張っていたが、バブル崩壊で下火。
    扱っている作品も東山魁夷、平山郁夫、加山又造など日本ローカルなモノで、世界的に見ると歪んだ市場でもあった。
    (その他に、工藝、民芸なども混在している。)
  • Knight Frankのレポートによると、過去10年では、ビンテージカー>コインという人気であるが、2017年直近12ヶ月ではアートが値上がり率トップ。
  • アートファイナンスの提供サービス Edmond de Rothschild
    アートローン(購入資金の提供)、そのローンを集めた私募債の発行販売 Bank REYL(スイスのプライベートバンク)
  • 投資アドバイザリ―業務なので、投資マーケットで売れるモノを買う
    また、ポートフォリオの分散投資に準ずるので、資金を全て特定のアーティストや分野(コンテンポラリー、オールドなど)に集中するのではなく分散投資。購入・売却が分かってしまうので、オークションには出さず、プライベートセールで処理。

税制を利用したアートの賢い買い方

  • ギャラリーから購入ならば消費税。オークションで購入ならば手数料。
  • コレクターの中には、アーティスト支援目的の強い方は、プライマリーでしか購入しないというケースもある。
  • 日本は、アート作品を減価償却できる。(世界的には珍しい。)
    20万~30万未満ならば、少額減価償却資産の扱いで、一括経費扱い、など。
    「事業の用に供している」ことが固定資産として必要だが、必ずしも飾っておく必要はなく、台帳管理しておき、いつでも閲覧できる状態になっていれば良い。
  • 所得税(限界税率)の差があるので、法人の方が良い。譲渡益税については、5年以上保有するのであれば、個人の方が安くなる。
  • 公共団体への寄付などは、コンテンポラリーアートでは、ほぼ税額優遇無し。
    (「重要文化財ないし同等の価値があると認められる美術品等」に該当する必要あり)
  • 交換取得による売却額の税制優遇無し(不動産は、あり)
  • アートの評価額:相続税法は「時価評価」必要。
    時価とは、、、、①売買実例価額、②精通者意見価格、③鑑定評価額(大手オークション会社等)
    (といっても、②、③でもかなりのブレがでる。)
    →相続税法上の課税対象。最高税率55%の累進課税。
  • お客さんの相続申告業務を携わることがあるが、一般家庭だと「家具一式」で個別に評価されたことはない、、、、
    (「コレクター」として名が通っていると話は別か。。。)
  • 相続後の売却における譲渡益は、被相続人の取得価格(相続時の時価ではない)ので注意。
    (アメリカは相続時時価にステップアップ)
  • 贈与の選択
    確実に将来の上昇が見込まれているのであれば、「相続時精算課税」を選択し、早めに贈与してしまう。
    (相続発生時の時価評価による課税を回避できる。)
  • そもそも、相続税をかけるのか、
    かけない国も香港、シンガポール、マレーシア、オーストラリアなど多数あり。

おカネだけではない、賢いアートの活用と守り方

  • コレクション展がお薦め。アーティストにもギャラリーにもできない、独自の視点でできる。自己満足とも言う
  • 作品貸出。「死蔵」を回避して、公の目に触れることで、アーティストの評価と価値を上げる。「見てもらってナンボ」。(儲けではなく、コストはかかる。)
  • 企業イメージの向上。財団化。

質疑応答

  • (Q)プライベートバンクでのアートの必要性は?
    (A)必須ではないし、全く知らずに業務をしている人々もいるが、、、。お客様との話の中で話題に作りに役立つし、アーティストの相続対策の話が舞い込むことが有ったり、、、マイナスにはなっていない。
  • (Q)継続的に見ていれば、、、値上がりするのがわかるか?
    (A)浴びる程見て、身銭を切れば、真剣にみるので、判ってくる。アーティストとも話す。評価されるアーティスト、時代の先端に居るアーティストのインテリジェンスは、高い。美術よりも、知術。)スーパーリアルや徹底した写実の美人画は、世界では過去のモノ。
  • (Q)売れる作品を手っ取りばやく見つけるには?
    (A)有名ギャラリー(先端的なギャラリー)のサイト上のアーティスト一覧に載っている名前なら、まず損はしない。作品数が多い事は、必須の条件。その中でも代表作。

新着情報のご案内をいたします。よろしければ、こちら よりご登録ください。

関連記事

  1. 第18回文化資源学フォーラム 「コレクションを手放す 譲渡、売却、廃棄」

    2019.05.29

    第18回文化資源学フォーラム 「コレクションを手放す 譲渡、売却、廃棄…

    2019年2月17日(日)13:30〜17:00会場:東京大学本郷キャンパス法文2号館1番大教室この…

    第18回文化資源学フォーラム 「コレクションを手放す 譲渡、売却、廃棄」
  2. 「黒田記念館」の特別公開を楽しむ。

    2020.02.25

    「黒田記念館」の特別公開を楽しむ。

    小学校か中学校の美術教育の賜物でしょうか、黒田清輝と言えば、「明治維新後に確立されていく日本における…

    「黒田記念館」の特別公開を楽しむ。
  3. 「スーパークローン文化財ってなに?」

    2019.09.23

    「スーパークローン文化財ってなに?」

    何?って思い、東京藝術大学の陳列館に行ってきました。「陳列館」…

    「スーパークローン文化財ってなに?」
  4. Spiral art lounge  Boca with Mari Yamauchi

    2019.05.19

    Spiral art lounge Boca with Mari Y…

    2019年4月25日 18:00 - 20:00ゲストスピーカー:山内真里(公認会計士 税理士)…

    Spiral art lounge Boca with Mari Yamauchi
  5. 「凪」と「船出」by 鳥羽実花 @ 建仁寺

    2019.09.23

    「凪」と「船出」by 鳥羽実花 @ 建仁寺

    京都最古の禅寺として知られる建仁寺。雲龍図や双龍図で有名なことは知っており、一度は訪れたかったお寺で…

    「凪」と「船出」by 鳥羽実花 @ 建仁寺
  6. 千住博展と手塚雄二展

    2019.04.22

    千住博展と手塚雄二展

    4月の上旬に横浜駅の百貨店で2つの展覧会が開かれました。いずれも大作の事前公開展。せっかくの機会なの…

    千住博展と手塚雄二展
  7. 太田喜二郎と藤井厚二 -日本の光を追い求めた画家と建築家

    2019.11.9

    太田喜二郎と藤井厚二 -日本の光を追い求めた画家と建築家

    2019年夏の美術館巡りでも印象に残った目黒区美術館での展覧会です。すでに会期(2019年7月13日…

    太田喜二郎と藤井厚二 -日本の光を追い求めた画家と建築家
  8. ファインアートで和を極めてみる。

    2020.02.23

    ファインアートで和を極めてみる。

    素晴らしいファインアートの世界を提供してくださるIsland Galleryさん。そこで、201…

    ファインアートで和を極めてみる。
  9. 出光美術館のコレクション

    2019.11.3

    出光美術館のコレクション

    2019年、11月に入り、気の早い方々のカウントダウンも始まりそうな時期になってきました。そんな中で…

    出光美術館のコレクション

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


過去記事はこちら

PAGE TOP