日時 2019年7月9日 18:30-20:00
場所 イタリア文化会館
講演者 マルゲリータ・ガネーリ(Margherita Ganeri、カラブリア大学人文科学科教授)
    栗原俊秀(翻訳家、京都大学修士課程を経て、カラブリア大学でガネーリ教授に師事)
    イタリア系アメリカ文学など「イタリアと移民」に関係のある作家を日本に紹介

イタリア移民といえば、映画のゴッドファーザーのイメージが大変強いですが、現実の世界での実情を知る機会がありませんでした。そんな時に開かれると聞いた講演会、いろいろなお話を聞くことができたので、備忘録を兼ねたメモを。

【講演】

  • (栗原)イントロダクション。今日のメインテーマは?
  • (ガネーリ)ディアスポラとは、ギリシャ語が起源で、「遠ざかっていく」というような意味
    狭い意味での移民史ではなく、文化の側面にも焦点を当てる。移民後の先でどのような社会を形成していくか、二世代、三世代目はどういう影響が継承されているのか、など。
  • (栗原)イタリア移民といえば、アメリカへの移民、そしてゴッドファーザーのイメージが強いが、実態はどうなのか?アメリカ以外への移民はどんな様子か?
  • (ガネーリ)背景としての移民の歴史をかいつまむと、1861年(イタリアの国家統一)が大量移民の第一波、北部イタリアから始まり、南イタリアは実は後続である。
    一般的に、相対的に貧しい南イタリアに移民が多く移民の始まりも南からというイメージがある事、への補足説明とのこと)
    第二次大戦直後が第二波であり、ここ5年くらいが第三波。第三波では、頭脳流出と北部への移民流入が問題視されている。
カラブリア州(Wikpedia地図より)
  • (栗原)19世紀、アメリカに大量に行った移民たちはどういう社会を形成していたのか、どんな影響を受けあっていたのか?
  • (ガネーリ)1880~1900年代は、安い大量の労働力を必要としていたアメリカに行くことは、アメリカン・ドリーム(の実現)だった。ただし、差別を多く受けていた。有色人種扱い(「ネグロ」という呼称)。イタリア国内の南北問題の影響も受けている。アメリカ国内のイタリア人の侮蔑的呼称としては、デイゴ(※1)が挙げられる。イタリア料理はひどいもの、イタリア人はネズミ、犯罪者と新聞などで言われていた。
    第二世代は、アメリカナイズ、同化を強いられてしまった。差別を受けていた故に自身の文化を捨てざるを得なかった。
    第三世代は、捨て去られたアイデンティティや文化の回復を試みている。その間にアメリカ、イタリア自体も変わっていったが、それぞれがトラウマを抱えている。
  • (栗原)最南端に位置するカラブリアと移民はどんな関係か?
  • (ガネーリ)現在の頭脳流出は過去とは違う。過去は労働力の流出。頭脳流出は第三波の当初の現象としては50歳手前の方々が仕事がなくイギリスに向かったがブレクジット問題が起きて戻ってくる方向も出てきている。
    カラブリア人口200万に対してカラブリア関係の海外移民者(海外在住者)は800万人。
    大学の生徒の多くも海外生まれであり、戻ってくる、行き来するという流出するだけの一方通行ではない関係になっている。移民二世代三世代目のイタリア語ネイティブでない学生もいる。これがディアスポラであり、今後、イタリア全体でこれが進むと考えているので、大学での研究の価値があると考えている。

※1
講演者(モデレーター)栗原俊秀氏の以下の論文に詳しい。
「回帰する移民の歴史 文学作品が描くイタリアと移民 – 立命館大学」
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/re/k-rsc/lcs/kiyou/pdf_29-1/lcs_29_1_kurihara.pdf

  • (栗原)こんな中でのイタリア系アメリカ文学とは?
  • (ガネーリ)イタリア系XX文学(XXには国や地域)は至るところにあるが、やはりアメリカが多い。文学活動として認められていった。ジョン・ファンテ、メラニア・G. マッツッコ、マリオ・プーゾ(ゴッドファーザー)、などなど。栗原氏が翻訳して日本にも紹介してくれている。重い移民生活を描いている作品が多い。カラブリアとの関係性も深い。
    一方、70年代以降は、ニューエイジ運動や新民族主義運動でアンソロジーを書く人が増えた。女性作家も活躍。政治色も強くなった。
    これらの拡がりに対応するかたちで2014年、イタリア系アメリカ文学のコースを設立。イタリア唯一である。フルブライトの支援を受けている点も社会科学系ではイタリア唯一。

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  • (栗原)一環としてのライティングセミナーとは?
  • (ガネーリ)学生の多くがイタリア系アメリカ人だったのでコース自体は人気があった。しかしイタリア国内では忘れ去られたカテゴリだった。今やイタリア側が移民受入国になった中、当時受けた差別の記憶を取り戻し、受け入れた人々に同じことを繰り返さない為にも教えるべきだと考えたのが当初
    イタリアからの移民はアメリカだけではないことや時代の多様化・脱国境化の流れの中で文学に限らない学術分野に広げていくために2017年にディアスポラスタディーズに変更した。その中で、Community engagement methodという手法を使って研究を続けている。
    プラットフォームとしてかっての先祖の過ごした地域、イタリアで過ごすプログラムを提供。
    サイトは、こちら(https://italiandiasporastudies.com/)。
    2019年は女性作家Maria Mazziotti Gillanを招いて、Heritage and Memory((文化的)遺産と記憶)をテーマにしたライティングセミナーを実施した。
    日本人、東洋人向けの移民文化を説明、体験するようなセミナーを今後開催予定である。

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【質疑応答】

  • (質問者)直近の移民事情は、頭脳流出だけでは語れないのではないか?ニューヨークの不法滞在者だってあるし?
  • (ガネーリ)その通り。オーストラリアは移民が厳しい、ユーロはビザなしでいける。社会科学人文科学系の高学歴者は仕事がなく再度修士を海外で取るために移住というパターンもある。けど、あまり仕事につけてない。また、年金受給者が生活が国内では出来ずポルトガルに移住して行くというのもある。移民の形態も多様化している。
  • (質問者)デモングラフィックの変化はどう出ているか?
  • (ガネーリ)出生率0.Xパーセントにもかかわらず小学校は減らない。その中でも貧しいカラブリア州にとっては特に受入の意識が強い。
  • (質問者)移民人数の規模感は?
  • (ガネーリ)唯一無二の結論はないが、大量移民の時代で2700万人が移民して半数が戦後に戻ったとされる。
    ここ数年は年間24万人が移民していると言われているが、ビザ3年間超えの不法滞在者もニューヨークでは多いとされ、実態は把握できていないのが実情。地方によって行く国が異なるというのがあった。50年代まで。そこで同郷者によるこミョ二ティ、共同組合を形成している。しかし、高齢化によりアイデンティティが移民者の中でも喪失してきている。
    現在では、特定の地方から特定の地域、国へというのは、あまりない

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(追伸)

カラブリア州と言えば、最大の都市はレッジョ・ディ・カラブリア(レッジョ・カラブリア県)。日本のサッカーファンには、中村俊輔さんがかってプレーしていた「レッジーナ」が有名ですよね。

中村俊輔さんのレッジーナ時代のプレーは、こちら、など。

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