4月の上旬に横浜駅の百貨店で2つの展覧会が開かれました。
いずれも大作の事前公開展。せっかくの機会なので拝見してきました。

高野山金剛峯寺襖絵完成記念 千住博展

1つめは、そごう美術館で開催されていた「高野山金剛峯寺襖絵完成記念 千住博展」。筆者の属する京都造形芸術大学の元学長でもあり、今でも大学院生向けの「千住ラボ」を開かれている千住博先生。

その昔、大徳寺聚光院別院の襖絵を手掛けられていた時に部分的に公開されたのをどこかの美術館(MOA美術館?)で拝見した時から、その圧倒的な「流れ」のある作品が印象に残っていました。

今回は、2015年の高野山金剛峯寺開創1200年を記念として、長年空白となっていた「茶の間」と「囲炉裏の間」に奉納される襖絵、「断崖図」と「瀧図」の2つの襖絵の事前公開です。

あわせて展示されていた初期の代表的作品や、2015年ヴェネツィア・ビエンナーレで特別展示された《龍神Ⅰ・Ⅱ≫など、素敵で、圧巻の作品ばかり。

お気に入りは、やはり、《龍神Ⅰ・Ⅱ≫でしょうか。蛍光塗料で造られた本作品。明るいところでは白い龍ですが、暗いところでバックライトを当てると光により様々な表情を見せてくれるいつまでも眺めてしまう作品です。

また、《三春の瀧桜》も印象に残りました。多くの瀧桜の作品がどっしりとした幹から広がる枝を描く(下又は水平の視線)のに対し、高めの視線で咲き誇る櫻を画面いっぱいに描き切っている点、これだけで春を満喫できそうです。「軽井沢千住博美術館」に収蔵されているようなので、是非一度訪問したいと思います。

在学中の京都造形芸術大学の東京外苑キャンパスで見つけた「お宝」。
先生の作品を、いつでも自由に観ることができる、在学生の役得ですね。

手塚雄二展「光を聴き、風を視る」

2つめは、髙島屋ギャラリーで開催されていた「手塚雄二展 光を聴き、風を視る」。不勉強ながら存じ上げていなかった画伯ですが、「光や空間を表現する西洋的な技法も取り入れ、日本の伝統美を高純度かつスマートな感性で流麗に描き上げ、新時代の日本画を切り拓く現代日本画壇を牽引する画伯」です。
190219h

今回は、2020年に鎮座百年を迎える明治神宮に奉納するために制作された「明治神宮内陣御屏風(日月四季花鳥)」の事前公開を含む、代表作品(画だけでなく茶道具等も含む)を展示する回顧展。

自然に対峙して、聴こえるはずない光の変化から自然の語りを感じ、視えるはずのない風から自然の手探りを感じる、日本古来からの自然に対する考えを体現されている方です。

大判の作品、自然を描いた作品がとても印象的で、大型ながら細微にわたって細かく描かれている作品たちは、遠くから眺め、四角によって観る、その両方で楽しめる作品たちでした。

印象に残ったのは、DM等にも使われている《おぼろつくよ》と、《明治神宮内陣御屏風(日月四季花鳥)》。多様な色を使いながらそのどれもが「優しい」色使いの作品は、眺めていて気持ちの安らぐ「癒し」の作品です。

(注)
本投稿の作品画像は、ポストカード・ポスター等を撮影したものです。従って、色、全体の構図などは実物とは異なります。

新着情報のご案内をいたします。よろしければ、こちら よりご登録ください。

関連記事

  1. 藪崎次郎 カタログブック 2017-2020『Fantastic Landscape Art Photography』

    2020.05.27

    藪崎次郎 カタログブック 2017-2020『Fantastic La…

    写真家藪崎次郎さんのカタログブックがIsland Galleryのオンラインサイトで、絶賛発売中です…

    藪崎次郎 カタログブック 2017-2020『Fantastic Landscape Art Photography』
  2. Spiral art lounge  Boca with Mari Yamauchi

    2019.05.19

    Spiral art lounge Boca with Mari Y…

    2019年4月25日 18:00 - 20:00ゲストスピーカー:山内真里(公認会計士 税理士)…

    Spiral art lounge Boca with Mari Yamauchi
  3. 退任記念 手塚雄二展

    2020.03.1

    退任記念 手塚雄二展

    2019年の春、横浜で出会うことができた手塚雄二画伯の作品。(手塚雄二展 「光を聴き、風を視る」 ※…

    退任記念 手塚雄二展
  4. 中野嘉之の世界 -時空を超えた出会い、感動とその美-

    2020.03.7

    中野嘉之の世界 -時空を超えた出会い、感動とその美-

    中目黒の「さくら」の美術館。何度運んでも、新たな発見と感動をくれるお気に入りの美術館。2/23いっぱ…

    中野嘉之の世界 -時空を超えた出会い、感動とその美-
  5. 皇室ゆかりの美術 - 宮殿を彩った日本画家 -

    2019.01.27

    皇室ゆかりの美術 - 宮殿を彩った日本画家 -

    1/20(日)で会期は終了してしまいました。お目当てだった東山魁夷の「満ち来る潮」が壁一…

    皇室ゆかりの美術 - 宮殿を彩った日本画家 -
  6. 染付 ― 世界に花咲く青のうつわ

    2019.04.12

    染付 ― 世界に花咲く青のうつわ

    会期は終了してしまい事後となりますが、勉強にもなり、楽しむこともできた出光美術館での展覧会のご報告で…

    染付 ― 世界に花咲く青のうつわ
  7. (妄想)にこたまライジングフォトアートミュージアム

    2019.07.10

    (妄想)にこたまライジングフォトアートミュージアム

    京都造形芸術大学通信教育部芸術教養学科での課題で、「博物館経営論」について考察しました。(課題レ…

    (妄想)にこたまライジングフォトアートミュージアム
  8. イタリアの「まち」の美しさについて(その3:まとめ)

    2018.09.5

    イタリアの「まち」の美しさについて(その3:まとめ)

    京都造形芸術大学通信教育部芸術教養学科での課題で、筆者の感じる「イタリアのまちの美しさ」についてまと…

    イタリアの「まち」の美しさについて(その3:まとめ)
  9. ロマンティックロシア

    2019.01.18

    ロマンティックロシア

    Bunkamuraザミュージアムで開催中のロシア国立トレチャコフ美術館所蔵品展。まも…

    ロマンティックロシア

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


過去記事はこちら

PAGE TOP