日本美を守り伝える TSUMUGU 紡ぐプロジェクト
皇室の至宝・国宝プロジェクト 記念フォーラム
2019/3/28 13:30-16:15 於:読売文化ホール

「皇室の至宝・国宝プロジェクト 記念フォーラム」に参加しました。新元号「令和」も発表されましたが、時代が変わっても変わらないものがあることについて、興味深いお話が多かったので、備忘をかねたメモを。

〇ご挨拶 宮田亮平(文化庁長官)

  • 官民一体の初の試み(宮内庁、文化庁、読売新聞社)である。
  • 保存・修理・公開の連携をいかに達成し、維持していくかが重要となる。収蔵品の早期公開による修復機会の発見、その連鎖が「紡ぐ」ことにつながっていく。
  • 修復にはお金が明かるので、入館料と一緒に寄付もぜひお願いしたい。(笑い)
  • 当たり前すぎて知らない事、外国人の方が知っていること、それを知り違う、自分になって、そして伝道者になっていってください。紡いでいきましょう。

〇基調講演 皇室・王室と美術コレクション 高階秀爾(美術史家・大原美術館長)

  • 「國光發於美術」国の光は美術に発す。2009年「未来をひらく福沢諭吉展」で展示された福沢諭吉の自筆の書。
  • 「帝室論」で、「帝室は、政治社会の外にあり、日本の文明・文化を育てる。日本人の精神の支えであり心の拠り所になる。」という話を展開。文明開化と言いながら、日本文明を守る必要性も主張した。この当時の「美術」にはいわゆる美術作品だけでなく広く文化や技術・技能を含めている。
  • 「三の丸尚蔵館」平成5年にできた。3000点近くの皇室が授受、購入した国内外の芸術品を保管し、国民に公開している。パトロンとしての皇室の機能。現在は、御即位30年・御成婚60年記念特別展「御製・御歌でたどる両陛下の30年」として、御歌会の御製の句と写真などを4/21まで公開中。
  • 「御歌会」には誰でも歌を出せる。実際に小学生の句が入選したこともある。日本では、美術や芸能などある才能の前にはすべての人が平等。それが「歌」であれば万葉集の時代からである。
  • 海外の事例では。フランスは、ナポレオン革命で王室が否定されたので、王室コレクションが散った。その後、重要なモノは集めておく必要があるという事で、ルーブルに寄せられた。王室の残るイギリスには、ウィンザー城に王室コレクションあり。ダヴィンチの「解剖図」などが保管されている。
  • 日本の芸術品は紙、岩絵の具など経年変化に弱い素材で作られたものが多い。この修復の実施、コスト負担も皇室が担ってきた。過去、フランスで河の氾濫がおきて、中世の写本が水浸しになってしまったが、日本から和紙を送り、修復(水の吸収)に役立ててもらった。
  • 皇后陛下の養蚕(「小石丸」)は、和紙として作品の修復に使われている。
  • 例えば、「春日権現絵巻」のように修復の過程で、裏彩色であることが分かるという様に、過去の素晴らしい技術を改めて発見することもある。

〇パネルディスカッション

高階秀氏爾、宮田亮平氏、島谷弘幸氏(九州国立博物館長)、太田彩氏(三の丸尚蔵館学芸室主任研究官)
司会:前田恭二(読売新聞社と京本社編集局文化部長)
(以下、敬称略)

  • (前田)特別展の印象は?
    (宮田)「三の丸尚蔵館」のモノが出るというだけで、藝大生はざわつく。海野勝珉、山田宗美など素晴らしい作品が展示されている。明治23年に皇室が指名した帝室技芸員の最初の10名二含まれている方々である。あえて言えば、高村光雲「養蚕天女」の飾り方には注文をつけたい。この作品は、後ろ姿がもっと良いから。
    (高階)太田さんが作ったカタログも凄い。書斎な部分も良く分かるようにできている。
    (島谷)書作品の見方として、無理して読もうとするのではではなく、まず観て欲しい。格調や全体の流れを感じて楽しんで欲しい。
    (太田)これまで、即位10、20、25年で名品展は実施してきた。今回はご退位もあり、平成の御代で皇室(両陛下)が「日本の文化に対してどんな考えを持たれているのか、そして伝えて行こうとされているのか」、を伝えられるように意識した。
  • 米国アーサー・M・サックラーギャラリー「皇室名宝展」(H9.12-H10.3)で、三の丸尚蔵館の収蔵品を公開した際には、多くの来訪者そして高い評価を得た。
    例えば、「和漢朗詠集」。紙に絵を描き、その上に文字(和歌)を記載するという作品(手法)は、西洋にない芸術の一つ
    和気清麻呂のご神託の場面を描いた佐久間文吾「和気清麿奉神教図」(1890年油絵)は、明治期の洋画でありながら、高い評価を得ていた。その理由として、日本の絵には「神」は描かれない、けど、「神」を感じられる、という点が、西洋宗教画との大きな違いとしてあるのではないだろうか。
    日本の工芸の手法として、「留守模様」という描かない模様を感じさせる手法(サンプルは、こちら)がある。宮田氏が持参した藝大生徒のうさぎの金工作品もタイトルは「月に想う」。この直接表現せずに、観る側の想像力を掻き立てる、または想像に委ねる(或いは要求する)点は、現代美術につながる考え方。
  • 2018年秋 「若冲 動植綵絵を中心に」がパリ・プティ・パレ美術館で開かれ、当時伊藤若冲はほとんど知られていなかったフランスで、こちらも多くの来訪者そして高い評価を得た。ここで、30幅全てををまとめて展示できたのは、「きぬえ」(東洋固有の方法で作られた)を平成11年からの作業で修復できたことが大きい
  • 見せたいけど、見せると弱る。見せないのが一番良い。これは、美術館員の二律背反であるが、死蔵してしまうことにより、修復タイミングの発見が遅れ、取り返しのつかないことになってしまう可能性を考えると、早期発見早期治療、そして公開が重要になる。これが、「保存・修理・公開」の連鎖。
  • (司会)TSUMUGUプロジェクトとは?
    (宮田)ロゴのデザインは、宮田長官自ら行った。「丸三角四角は宇宙」を意識して、「いとへん」を丸・三角で、四角は死角なので周りを八角で囲う様にした。
    (高階・島谷)蚕は「匹」ではなく、「頭」で数える。柳田国男「遠野物語」(東北の伝承民話)に馬と蚕(=天の虫)の関係を語る物語がある。(他にも伝承はあるらしい。)
    (宮田)単に、技術や手法だけでなく、価値観も紡がれていかないといけない。

締めくくりには、文化庁といえばの「銅鑼」も登場し音色を生で聴く機会を持つというちょっとしたサプライズもいただける、
とっても有意義な時間を過ごしました。

「両陛下と文化交流 – 日本美を伝える – 」は「紡ぐプロジェクト」の一環。ご即位の儀式に際して用いられる「悠紀・主基地方風俗歌屏風」のうち、3/31までの展示という東山魁夷画伯による「悠紀地方風俗歌屏風」がお目当て。秋田地方の風景といいながら、日本の原風景を濃縮したような雄大な景色には感銘しました。そして、もうひとつは、各記念ごとに造られるというボンボニエール。様々な趣向を凝らした作品は、観ているだけで楽しくなります。(欲しくなります。)

「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」は、1970年に辻邦雄さんにより執筆された「奇想の系譜」の決定版と言われている展覧会。今でこそ、誰もが知る伊藤若冲も執筆当時は日本であまり知られていなかった作家(海外、米国では既に、ジョー・プライスさんという著名なコレクターが存在)。それを「掘り出し」、有名にした方の選んだ方々、作品だけに見ごたえがありました。また、辻さん自身は当時「動植綵絵」をご覧になっていなかったというエピソードは、驚きでした。

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一番印象に残ったのは、長沢芦雪の襖絵「雲龍図」「昇龍図」。島根県西光寺に通常は保管されているようです。今にも動き出しそうな生き生きとした描写は圧巻でした。

【参考文献】
鈴木隆敏 「福沢諭吉のメセナ-文化財保護の先導性-」 慶應義塾大学アートセンター 2009年

https://ja.wikipedia.org/wiki/帝室論
https://ja.wikipedia.org/wiki/三の丸尚蔵館
https://ja.wikipedia.org/wiki/小石丸
https://ja.wikipedia.org/wiki/和気清麻呂

太田彩さんの伊藤若冲に関する書籍。こちらも、じっくり眺め、そして読みたいです。

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