国立新美術館で開催されている2つの企画展。

中学生のころ、退屈でしかなかった「美術」に対して初めて自分から興味を持つようになった東山魁夷画伯。
それ以来、特別展が行われればほぼ鑑賞に出かけ、また、長野市善行寺そばの長野県信濃美術館東山魁夷館にも何度か足を運ぶ。
何度も観た作品であるが、いつ観ても飽きない。雄大さと繊細が併存している空間(キャンバス、壁画)に心が和む。

今回も、久しぶりに拝見できた「唐招提寺御影堂障壁画」、迫力満点の『濤声』はもちろん素晴らしいのだが、上段の間の床と違棚に配された『山雲』の雰囲気が大好きである。
その他の作品では『白夜光』が今回展示の中での一番だろうか。全体の構図としての雄大さ、樹々一つ一つに描かれる繊細さ、その併存である。
絶筆である『夕星』をゆっくり鑑賞できたのも良かった。画伯にとっての理想郷なのだろうか、と想いを馳せながら。

一番のお気に入り『夕静寂』を鑑賞できなかったのが少し残念・・・

詳細や画像は、企画展の公式ページ へ。

ピエール・ボナールは、知識不足のため、各種メディアで企画展が開催されることを知っている程度の実質的にはお初にお目にかかるかた。19世紀から20世紀第二次大戦開戦直後ぐらいに活躍された「アーティスト」(「画家」という枠には収まらないというのが感想。)

「不意に部屋に入ったときに一度に目に見えるもの」を描きたかったという一瞬の時間を切り取る感性は時間を止めてしまう。

『浴盤にしゃがむ裸婦』に代表される女性達は光の効果を用いて柔らかに表現され、まさに「水の精」(ナイアス)である。

そして、長らく滞在したノルマンディーや晩年を過ごしたル・カネの風景画は、色彩と光にあふれ、穏やかな気持ちをもたらしてくれる。『テラスの犬』や『≪村の早春≫のための習作』、『ル・カネの眺望』など、数十年経た今見ても色鮮やかながら穏やかに落ち着きのある配色であり、当時はどんなに綺麗だったのかと思わずにはいられない。

詳細や画像は、企画展の公式ページ へ。

とても充実した「はしご」であり、どちらかがどちらかの「ついで」などとは言えない時間を過ごすことができた。

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