京都造形芸術大学通信教育部芸術教養学科での課題で、筆者の感じる「イタリアのまちの美しさ」についてまとめてみました。
はじめに。
本課題の担当者であり必読本の執筆者でもある井口勝文(先生)・井口純子ご夫妻が、イタリア・メルカテッロ町から名誉市民の称号を授与されました。おめでとうございます。
その時の動画は、 こちら からご覧ください。

「その3」は、まとめとして、日本のまちを比較検証し、「美しいまち」を作るには、を考察してみました。

勤務先が東京都世田谷区、東急田園都市線・大井町線の主要駅である二子玉川駅である。この「まち」は、かなり人工的に生成された「まち」である。そして一般的な評価も高いので、イタリアの「まち」の美しさに関する考察内容をもとに、この「まち」の美しさ・醜さを考えてみたい。

二子玉川は駅名であって地名ではない。それでも当該エリアを呼ぶ際には、実際の地名ではなく「二子玉川」又は略して「にこたま」と呼ばれることが多い。このことからも判るように電車を運営する東急グループ主体で創りだされた人口の「まち」である。

開発史を読むと、玉川高島屋が開業した1969年には都心勤務者の為の田園都市として機能している。しかし駅の東側では、古い木造家屋、狭い道路で災害対策や歩車分離など多くの課題を抱えたままであった。1980年代になり、地元有志により発足された「再開発を考える会」が住民や行政を巻き込み、ここに東急グループも加わって、再開発を推進し始める。
計画から実行の間にバブル経済とその崩壊、といった時代を経る中で、環境への意識も高まり、「水・緑・光」、「自然との共生」をテーマとした都市開発が行われ、2011年から2015年にかけて現在の姿となる。

このような二子玉川の美しさは何か?
一番は、「機能美」ということだと思う。環境を意識して配置される諸設備(風力発電、太陽光パネル、散水機、噴霧器、空中庭園等)と商業施設は、ユニバーサルデザインもふんだんに取り入れられ、人々のすごしやすさ、居心地の良さを提供している。横を流れる多摩川から水を引き込み造作された回遊式の日本庭園「帰真園」は、「造形美」と共に「自然美」も兼ね備えていると言えると思う。一方で、歴史的な重み、蓄積は少なくとも表面上には表れてこない。それは、ある人々にとっては「人工的に作られた薄っぺらな街並み」として醜い「まち」と評価されてしまうのかもしれない。だが、実際に観察すると、30代前半と思われるご夫婦とその子供達(注:一人っ子ではない)の世帯が非常に多いことに気づく。これら世帯にとってはここが故郷であり、これから歴史が作られていくのだと考えれば、決して醜いものでは無いと考える。

それでは、「まち」に美しさを備える、美しさを増やすにはどうしたらよいのだろうか?

①「まち」単位での中長期的な計画の策定、
②計画を実行できる権限(と義務)の付与・委譲、
③当事者の「いごこち」意識の向上
④外部への発信。

これらを同時並行的に進めていくことで、美しい「まち」が増えていくかと思う。

 

①「まち」単位での中長期的な計画の策定】
②計画を実行できる権限(と義務)の付与・委譲
まずは、「仕組み」の構築である。イタリアでは、「まち」を構成する地帯の全てに渡る体系的な枠組みを風景計画として策定することを義務付けた「ガラッソ法」があり、古きモノを無暗に廃棄させず、利便性とのトレードオフもある程度は涵養していくような、仕組みが整えられている。そして、重要な点は、その仕組みを実行する権限と責任を「コムーネ」が保有していることである。「まち」作りは、地元当事者の生活に直結するものであり、地元当事者の視点・参加が必須なので、より当事者に近いレベルの組織が遂行していくことが必要だと思う。日本には「風致地区」といった指定があるが、それを当事者に近いレベルの組織で進めている行政単位(最大単位で市。理想は、区・町・村レベルか。レベルの確定は別途、検討が必要と思料。)は少ないと思うので、まずは、枠組み作りではないだろうか。

③当事者の「いごこち」意識の向上
④外部への発信
枠組みができても、それを担う当事者がいなければ物事は成り立たない。その意味で、最も重要であると考えるのが、当事者(地元の方々)の意識付けである。
「まち」に歴史があるから美しいということはなく、そこで生活する当事者たちが居心地の好い場所にしていこう、居心地の好い場所である、と思って長く居続ける態勢になっていることが美しさに繋がっていくと思う。作られる「枠組み」を元に、地元当事者の参加を促し、フィードバックを得るようなコミュニティ活動で、当事者の居心地感を増していくと同時に、現代のSNSの仕組みを有効活用して地元視点の情報発信を強化することが効果的だと思う。

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